政府の株放出&郵政自社株買い

2021年10月6日に東日本大震災の復興財源に充てるため、政府は保有する日本郵政の株式10億株余りを売却すると発表しました。
10月29日に郵政株の受け渡しが行われ、政府の保有比率は郵政民営化法で義務づけられた下限の3分の1近くまで下がることになり、政府の郵政株式の売却は今回が最後となる見通しです。
政府は日本郵政の発行済み株式総数の60%余りを保有していましたが、今回はおよそ27%に当たる10億株余りを売却しました。
郵政グループと言えば高配当銘柄なので、政府から株が放出されたこの機会にお買い得銘柄があるか見てみましょう。
売却価格
財務省が発表した郵政株の売り出し価格は、10月25日終値から2%引きの1株820円60銭。
2015年11月の株式上場時は1株1400円、17年9月の2次売却時は1株1322円なので、以前より大幅に値下がりして売却しています。
政府は1次売却で1兆4109億円、2次売却で1兆3984億円、今年6月の郵政の自社株取得で2499億円の売却収入を得ており今回の売却で売却収入が8367億円なので、2015年11月の株式上場以降の累計売却収入は3兆8961億円となります。
郵政グループ3社比較
日本郵政は日本郵便(非上場)+ゆうちょ銀行+かんぽ生命などからなる、日本郵政株式会社法に基づき、日本郵政グループの持株会社として設立された日本の特殊会社です。
もともとは日本郵政公社でしたが、2007年の郵政民営化により日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命に分割されました。
本来であれば郵政グループ3社同士で比べたいところですが日本郵便は非上場。
なのですが実は日本郵政の決算から読み取れます。
今回は上場している日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株価等を比べていきましょう。
業績比較

郵政グループ中間決算時点の経常収益は5兆7千億円です。
そのうち半分以上を占めるのはかんぽ生命の経常収益3兆2千億円。
次いで日本郵便の1兆7千億円とゆうちょ銀行の1兆1千億円。
しかし経常利益を見ると5400億円の利益に対して、
- ゆうちょ銀行が3200億円
- かんぽ生命が1800億円
- 日本郵便が348億円
となり、圧倒的に郵便事業の利益額が低いことに気が付きます。
つまり郵政グループの利益はほぼゆうちょ銀行とかんぽ生命が稼ぎ出しているのです。
しかし日本郵政は、「保有するゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式の保有割合を2025年度までに50%以下に減らす方針」としています。
これでは収益源の2社からの利益が減る為、日本郵政の収益力が弱まる可能性が高いでしょう。
株価比較

- 2021年11月26日終値:868.3円
- PER:6.81倍
- PBR:0.24倍
- 年初来高値:1,101円
- 年初来安値:793.4円

- 2021年11月26日終値:929円
- PER: 13.38倍
- PBR:0.30倍
- 年初来高値:1,149円
- 年初来安値:838円

- 2021年11月26日終値:1,748円
- PER:5.91倍
- PBR:0.26 倍
- 年初来高値:2,428円
- 年初来安値:1,759円
配当比較

- 一株配当:50円(予想)
- 税引き前配当利回り:5.69%
- 配当性向:55%(予想)
- 配当落ち日:3月30日 9月29日

- 一株配当:40円(予想)
- 税引き前配当利回り:4.3%
- 配当性向:%(予想)
- 配当落ち日:3月30日 9月29日

- 一株配当:90円(予想)
- 税引き前配当利回り:5.14%
- 配当性向:%(予想)
- 配当落ち日:3月30日 9月29日
優待比較
なんと今回ゆうちょ銀行に株主優待が追加されました!
500株以上でカタログギフトが貰えます。
2021年11月現在株主優待はありません
2021/11/19更新
500株以上:3,000円相当のオリジナルカタログギフト
2021年11月現在株主優待はありません

いきなり優待追加はゆうちょ株放出のための撒き餌に見える!?
まとめ
- 政府の日本郵政株売却はひとまず終了
- 日本郵政からゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式売却は将来的に有り
- 日本郵政の利益はゆうちょ銀行とかんぽ生命からの利益が大部分を占める
- 日本郵政がゆうちょとかんぽ株保有数を減らした場合は収益低下
- 売却で市場に株式が放出された場合はゆうちょ銀行とかんぽ生命側の株価も低下
- 現時点では各銘柄とも高配当
- ゆうちょ銀行のみ500株以上保有で株主優待あり
- 組織の不祥事ニュースが相次ぎコンプライアンスに不安あり
株価は安く感じますが、日本郵政はその収益の大半がゆうちょ銀行とかんぽ生命からの利益であり、日本郵便の郵便事業の利益額は10%に満たないものとなっています。
このためゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式売却が進むと、日本郵政の利益は減少することとなり高配当の維持が難しくなることが懸念されます。
また売却によって市場に出回る株式数が増えることで、放出されたゆうちょ銀行とかんぽ生命側の株価も下落する可能性が高いです。
ゴリラとしてはゆうちょ銀行のみ株価下落した場合のみ購入検討するレベルです。
日本郵政は楽天グループとの資本業務提携が面白いと思いますが、組織の体質が変わっているか見えない点と楽天側の通信事業の苦戦などまだまだ新体制はこれからと思います。
それではまた次回!
byかいゆー
日本郵政と楽天の提携についてはこちら
前回の記事はこちら
JR各社比較記事はこちら
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