ニュース
武田薬品(4502)は2021年10月6日、開発中の治療薬 TAK-994 の臨床試験中断を発表しました。
これを受けて2021年10月7日武田薬品の株価が急落し、週初10月5日終値3567円だった株価は、10月7日の終値3221円と約10%の下落となっています。
原因は発表されたナルコレプシー治療薬 TAK-994 の臨床試験中断。
新薬を1つ開発するには、約10年もの開発期間と100億円単位の多額の開発費がかかると言われ、それだけ費やしても新薬の開発の成功率はわずか約25,000分の1程度と言われます。
中でも TAK-994は次の”ブロックバスター”として売り上げ6000億円が期待されている新薬でした。
ブロックバスター
ブロックバスターとは画期的な薬効を持つ新薬で、その対応疾患領域で発売されている他製品と比べ圧倒的な売り上げをあげる製品のこと。売り上げの明確な定義は存在していないが、年商10億ドル(1000億円)以上の製品を指すことが多い。
ナルコレプシー とTAK-994
ナルコレプシーとは、一日を通して覚醒や注意力を保つことができず、日常的に無意識に不適切な時間であっても入眠する病気。
TAK-994は、睡眠-覚醒サイクルが変化する慢性神経疾患であるナルコレプシー患者の日中の過度の眠気を治療する薬として開発が進められています。

くすり研究所 | 日本製薬工業協会
くすりの基本知識や正しい使い方などを紹介している「くすり研究所」です。くすりの知識を深めていただくことはもちろん、学校の自由研究などにもお役立ていただけます。

経口オレキシン作動薬TAK-994の臨床プログラムのアップデートについて
当社は、このたび、経口投与可能なオレキシン2型受容体選択的作動薬であるTAK-994の臨床第2相試験において、安全性シグナルの存在が明らかになりましたのでお知らせします。緊急の予防策として、患者さんへの投与を中断し、2つの臨床第2相試験を予定より早く終了することを決定しました。これによりTAK-994のベネフィット・リ...
収益が期待されていた新薬だった為、市場から失望売りを食らったかたちです。
製薬会社は新薬開発で株価急騰する一方、開発中止で急落するので、投資タイミングが難しいセクターでもあります。
しかし武田薬品は配当好き投資家なら必ずチェックする高配当株でもあります。
高配当株の買い時はズバリ株価が下がったまさにその時。
今回は配当利回り5%超えの武田薬品についてみていきましょう!

ゴリラ
5%超える配当ってことはやっぱりリスク大きいんだよね?
事業
武田薬品は世界各地の学術機関との連携、バイオベンチャー企業への投資、技術・資産に関する事業開発パートナーシップを結ぶ世界的な製薬会社。
2019年にはアイルランドの製薬大手シャイアーを約6兆円で買収。(純資産3兆円+のれん代3兆円)
シャイアーは薬価の上昇してきた米国で6割の収益を持ち、武田薬品は買収によってグローバルな医療用医薬品部門強化しています。
武田薬品の成長戦略は、長期の開発期間と多額の開発費がかかる新薬を自社で開発するのではなく、すでに研究中の新薬を持っている医薬品企業を買収して研究人員ごと買い取る戦略です。
日本の薬の特許期間は20年で、特許期間終了すると薬価が大幅に下がり利益が激減するので製薬会社は常に新薬研究開発を続ける必要があるのです。
かつては家庭用医薬品(アリナミン等)を国内向けに販売していた業態から、2000年以降は企業買収を重ね大きく業態転換しています。
企業買収(M&A)を繰り返す武田薬品は研究開発において、以下のバイオ医薬品分野と血漿分画製剤およびワクチンを重点領域として注力しています。
バイオ医薬品
- オンコロジー(がん)・・・がん治療薬製造および研究開発
- 希少疾患・・・免疫学、血液学、代謝異常の希少疾患の治療研究開発
- ニューロサイエンス(神経精神疾患)・・・神経疾患、および精神疾患治療研究開発
- 消化器系疾患・・・消化器系疾患の治療研究開発
血漿分画製剤・・・血漿分画製剤製造および研究開発
ワクチン・・・対感染症ワクチンの開発

ゴリラ
アリナミンとか家庭用医薬品は売却して、
利益の高い製薬開発にシフトしていったんだね!
業績
【業績】 | 売上高 | 営業利益 | 税前利益 | 利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
---|
19.3 | 2,097,224 | 204,969 | 94,896 | 109,126 | 113.5 | 180 |
---|
20.3 | 3,291,188 | 100,408 | -60,754 | 44,241 | 28.4 | 180 |
---|
21.3 | 3,197,812 | 509,269 | 366,235 | 376,005 | 240.7 | 180 |
---|
22.3予 | 3,370,000 | 488,000 | 352,000 | 187,300 | 119.1 | 180 |
---|
出典:楽天証券
シャイアーの買収により21年3月利益が大きく上昇しています。
しかしシャイアー買収時ののれんが3兆円発生し、重くのしかかっている点は注意が必要です。
買収後の営業利益が5000億円なので、営業利益の約6倍の金額をシャイアー買収時にのれん代として支払っているわけです。
また製薬会社特有のリスクとして薬のパテントクリフ(新薬の特許切れ後の売り上げ急減)がある為、
常に新薬開発を成功し続けなければいけません。
のれん
「のれん」とは・・・企業がM&A(買収・合併)で支払った金額のうち、買収先企業の純資産を上回った差額。
純資産(土地、設備など)以外のブランド力、技術力などの見えない価値をお金に換算したもの。
パテントクリフ
新薬特許が切れると売上が急減し売り上げを示すグラフが崖のような形になるところから、新薬に関する特許が切れたあと、後発医薬品(ジェネリック)の進出によって売上が激減すること。

ゴリラ
高配当、M&A・・・のれん・・・JT。
くっ・・・頭がっ!!
株価
出典:株ドラゴン
株価
- 2021年10月8日終値 3,199円
- PER:26.85倍
- PBR:0.96倍
- 年初来高値:4,365円
- 年初来安値:3,325円
株価は年初来安値を割り込んでおり、PBRも解散価値である1倍を割っています。
10月の株価下げ幅は10%と、コロナショックに次いで大きく落下していますね。
期待されていた大型案件治療薬中断と9月の配当落ち+岸田首相の金融所得課税強化発言など、
材料とタイミングが揃って売り込まれたのでは?と思います。
この下げ過ぎ感に今回ゴリラは注目しています!

ゴリラ
配当
配当
- 一株配当:180円(予想)
- 税引き前配当利回り:5.62%
- 配当性向:151.26%(予想)
- 配当落ち日:3月30日 9月29日
2009年からは一貫して年間180円配当となっていますが、株価は大きく下落しているので現在は配当利回りが大きく上昇しています。 ちなみに2008年には株価は6000円台でした。
ただし配当性向も100%超えと危険水準なので、減配の可能性が常に付きまといます。

ゴリラ
やっぱりそんなに美味しい話はなかったね。
減配発表されるとさらに株価下落するリスク有!!
優待
まとめ
2008年には6000円台だった株価が右肩下がりで現在は3000円台となり、株式投資の「成長する企業に投資する」という基本戦略にはまったく合致しない残念な結果。
一方バリュー株投資や配当投資としてみると、2008年の配当水準そのままで株価半額程度まで落ちているので購入価格という面では明らかに買いやすくなっています。(=事業リスク増大)
特に直近10%の株価下落で企業価値と株価のギャップが発生している可能性もあり、今後の買収効果や配当金の維持など目が離せない銘柄となっています。
ゴリラは世界的な製薬会社へと変革途上の可能性と直近の割安感から今回購入してみました。
ただ業種は違いますが、海外M&Aを繰り返して同じような値動きをした「JT」が頭をよぎるので、
あくまで高配当ポートフォリオのほんの一部として楽しみたいと思います。
製薬会社決算資料は読みづらく引き続き解読していきたいと思います!
それではまた次回!
byかいゆー
前回の記事はこちら
同じく高配当+M&A銘柄のJTについてはこちら
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武田薬品(4502)は2021年10月6日、開発中の治療薬 TAK-994 の臨床試験中断を発表しました。
これを受けて2021年10月7日武田薬品の株価が急落し、週初10月5日終値3567円だった株価は、10月7日の終値3221円と約10%の下落となっています。
原因は発表されたナルコレプシー治療薬 TAK-994 の臨床試験中断。
新薬を1つ開発するには、約10年もの開発期間と100億円単位の多額の開発費がかかると言われ、それだけ費やしても新薬の開発の成功率はわずか約25,000分の1程度と言われます。
中でも TAK-994は次の”ブロックバスター”として売り上げ6000億円が期待されている新薬でした。
ブロックバスター
ブロックバスターとは画期的な薬効を持つ新薬で、その対応疾患領域で発売されている他製品と比べ圧倒的な売り上げをあげる製品のこと。売り上げの明確な定義は存在していないが、年商10億ドル(1000億円)以上の製品を指すことが多い。
ナルコレプシー とTAK-994
ナルコレプシーとは、一日を通して覚醒や注意力を保つことができず、日常的に無意識に不適切な時間であっても入眠する病気。
TAK-994は、睡眠-覚醒サイクルが変化する慢性神経疾患であるナルコレプシー患者の日中の過度の眠気を治療する薬として開発が進められています。

くすり研究所 | 日本製薬工業協会
くすりの基本知識や正しい使い方などを紹介している「くすり研究所」です。くすりの知識を深めていただくことはもちろん、学校の自由研究などにもお役立ていただけます。

経口オレキシン作動薬TAK-994の臨床プログラムのアップデートについて
当社は、このたび、経口投与可能なオレキシン2型受容体選択的作動薬であるTAK-994の臨床第2相試験において、安全性シグナルの存在が明らかになりましたのでお知らせします。緊急の予防策として、患者さんへの投与を中断し、2つの臨床第2相試験を予定より早く終了することを決定しました。これによりTAK-994のベネフィット・リ...
収益が期待されていた新薬だった為、市場から失望売りを食らったかたちです。
製薬会社は新薬開発で株価急騰する一方、開発中止で急落するので、投資タイミングが難しいセクターでもあります。
しかし武田薬品は配当好き投資家なら必ずチェックする高配当株でもあります。
高配当株の買い時はズバリ株価が下がったまさにその時。
今回は配当利回り5%超えの武田薬品についてみていきましょう!

ゴリラ
5%超える配当ってことはやっぱりリスク大きいんだよね?
事業
武田薬品は世界各地の学術機関との連携、バイオベンチャー企業への投資、技術・資産に関する事業開発パートナーシップを結ぶ世界的な製薬会社。
2019年にはアイルランドの製薬大手シャイアーを約6兆円で買収。(純資産3兆円+のれん代3兆円)
シャイアーは薬価の上昇してきた米国で6割の収益を持ち、武田薬品は買収によってグローバルな医療用医薬品部門強化しています。
武田薬品の成長戦略は、長期の開発期間と多額の開発費がかかる新薬を自社で開発するのではなく、すでに研究中の新薬を持っている医薬品企業を買収して研究人員ごと買い取る戦略です。
日本の薬の特許期間は20年で、特許期間終了すると薬価が大幅に下がり利益が激減するので製薬会社は常に新薬研究開発を続ける必要があるのです。
かつては家庭用医薬品(アリナミン等)を国内向けに販売していた業態から、2000年以降は企業買収を重ね大きく業態転換しています。
企業買収(M&A)を繰り返す武田薬品は研究開発において、以下のバイオ医薬品分野と血漿分画製剤およびワクチンを重点領域として注力しています。
バイオ医薬品
- オンコロジー(がん)・・・がん治療薬製造および研究開発
- 希少疾患・・・免疫学、血液学、代謝異常の希少疾患の治療研究開発
- ニューロサイエンス(神経精神疾患)・・・神経疾患、および精神疾患治療研究開発
- 消化器系疾患・・・消化器系疾患の治療研究開発
血漿分画製剤・・・血漿分画製剤製造および研究開発
ワクチン・・・対感染症ワクチンの開発

ゴリラ
アリナミンとか家庭用医薬品は売却して、
利益の高い製薬開発にシフトしていったんだね!
業績
【業績】 | 売上高 | 営業利益 | 税前利益 | 利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
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19.3 | 2,097,224 | 204,969 | 94,896 | 109,126 | 113.5 | 180 |
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20.3 | 3,291,188 | 100,408 | -60,754 | 44,241 | 28.4 | 180 |
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21.3 | 3,197,812 | 509,269 | 366,235 | 376,005 | 240.7 | 180 |
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22.3予 | 3,370,000 | 488,000 | 352,000 | 187,300 | 119.1 | 180 |
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出典:楽天証券
シャイアーの買収により21年3月利益が大きく上昇しています。
しかしシャイアー買収時ののれんが3兆円発生し、重くのしかかっている点は注意が必要です。
買収後の営業利益が5000億円なので、営業利益の約6倍の金額をシャイアー買収時にのれん代として支払っているわけです。
また製薬会社特有のリスクとして薬のパテントクリフ(新薬の特許切れ後の売り上げ急減)がある為、
常に新薬開発を成功し続けなければいけません。
のれん
「のれん」とは・・・企業がM&A(買収・合併)で支払った金額のうち、買収先企業の純資産を上回った差額。
純資産(土地、設備など)以外のブランド力、技術力などの見えない価値をお金に換算したもの。
パテントクリフ
新薬特許が切れると売上が急減し売り上げを示すグラフが崖のような形になるところから、新薬に関する特許が切れたあと、後発医薬品(ジェネリック)の進出によって売上が激減すること。

ゴリラ
高配当、M&A・・・のれん・・・JT。
くっ・・・頭がっ!!
株価
出典:株ドラゴン
株価
- 2021年10月8日終値 3,199円
- PER:26.85倍
- PBR:0.96倍
- 年初来高値:4,365円
- 年初来安値:3,325円
株価は年初来安値を割り込んでおり、PBRも解散価値である1倍を割っています。
10月の株価下げ幅は10%と、コロナショックに次いで大きく落下していますね。
期待されていた大型案件治療薬中断と9月の配当落ち+岸田首相の金融所得課税強化発言など、
材料とタイミングが揃って売り込まれたのでは?と思います。
この下げ過ぎ感に今回ゴリラは注目しています!

ゴリラ
配当
配当
- 一株配当:180円(予想)
- 税引き前配当利回り:5.62%
- 配当性向:151.26%(予想)
- 配当落ち日:3月30日 9月29日
2009年からは一貫して年間180円配当となっていますが、株価は大きく下落しているので現在は配当利回りが大きく上昇しています。 ちなみに2008年には株価は6000円台でした。
ただし配当性向も100%超えと危険水準なので、減配の可能性が常に付きまといます。

ゴリラ
やっぱりそんなに美味しい話はなかったね。
減配発表されるとさらに株価下落するリスク有!!
優待
まとめ
2008年には6000円台だった株価が右肩下がりで現在は3000円台となり、株式投資の「成長する企業に投資する」という基本戦略にはまったく合致しない残念な結果。
一方バリュー株投資や配当投資としてみると、2008年の配当水準そのままで株価半額程度まで落ちているので購入価格という面では明らかに買いやすくなっています。(=事業リスク増大)
特に直近10%の株価下落で企業価値と株価のギャップが発生している可能性もあり、今後の買収効果や配当金の維持など目が離せない銘柄となっています。
ゴリラは世界的な製薬会社へと変革途上の可能性と直近の割安感から今回購入してみました。
ただ業種は違いますが、海外M&Aを繰り返して同じような値動きをした「JT」が頭をよぎるので、
あくまで高配当ポートフォリオのほんの一部として楽しみたいと思います。
製薬会社決算資料は読みづらく引き続き解読していきたいと思います!
それではまた次回!
byかいゆー
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同じく高配当+M&A銘柄のJTについてはこちら
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